自分の肩書はロベール国の第二王子ルイス様の従者兼、護衛というものだった。
 一時は失業の危機に陥りもしたが、人間諦めなければどうにかなるらしい。
 たとえ働く場所が変わろうと、自分にとっては仕えるべき人が同じであるのなら、それでいいことだった。
 しかしこの焦りは失業騒動の比じゃあない。それというのも年下の仕事仲間であるサリアが原因だ。サリアは窮地を救われて以来、ルイス様にお仕えすることを生き甲斐としている。
 なにしろ自分も同じ境遇にあたるわけで、離れたくないという気持ちも理解は出来る。
 理解出来ると、そう思っていた時期が自分にもあった。あの時までは確かに、そのはずだったのに……

 何をどうしたら料理人になりたいなんて発想になるんだよ! あいつに限ってあり得ねーだろ! 理解出来ねーよ!

 声を大にして叫びたい。
 何をどうしたら料理人という発想にたどり着く?
 仮に閃いたとしても自分が元凶だとは口がさけても言わないでほしかった。
 そもそもサリアは……

「それで。これは一体どういうことかな?」

 硬い声に問い詰められ、のどまで出かけていた言葉を飲み込む。生憎それどころではなかったことを、きつめの呼びかけによって強制的に思い出せと言われていた。
 前述の経緯から、自分は主であるルイス様から厳しく問い詰められているところだ。
 笑顔で聞かれているはずが、ほとんど尋問に近い。ルイス様から感じる静かな苛立ちに冷や汗を流しながら答える羽目になった。

「それが、自分にもさっぱりでして……」

 情けないことに言葉尻がしぼんでいくい。それでも従者兼護衛かよ!