「無欲な女だな。お前は正しく自身の価値を認識すべきだ。お前のような人間が地方で燻るのは惜しい」

「お褒めにあずかり光栄です」

「いっそ俺に仕えてはどうだ。お前なら料理以外でも訳に立つだろう」

 いっそ貴方には関係ないと言って差し上げましょうか!?

「申し訳ございません。大変光栄なことですが、私の主は生涯ただ一人と決めております」

 言葉にはしませんが、言って差し上げます。
 私の主は生涯、主様だけなんですよーだ!

「あの時、何故ともについて行かなかったのか?」

 あの時というのは主様が追放された日のことを言っている。
 本当に、私の逆鱗に触れるのが上手な方ですね!

「断られてしまいました。私は必要ないようでしたから」

 あくまで誰とは言いませんが、これくらいは話して差し上げます。私からの選別だと思っていただきましょう。
 すると陛下は目を丸くする。とても信じられないと言いたいようだ。

「なんだそれは? お前のような優秀な人間を不要だと? なおさら俺に仕えてはどうだ」

「違います!」

 思わず叫んでしまってから後悔する。

「申し訳ありませんでした」

 それでも主様という人を誤解されたくはなかった。