うちの高校の謎の風習。

それは1年生のうちは2人で交換日記をつけるというものだ。

もともとはお互いの素行監視という目的から始まったらしいこれは普通なら男子同士、女子同士でつけるものであるはず……なのに…


「はぁ〜……1年間お前とこんなんするわけ?」

なんで不良で有名な東雲くんが目の前で大きなため息をついてるんだろう。


いやため息つきたいのはこっちなんですけど……

「……しょうがないでしょ。今年は男女ともに奇数なんだから」


そう、今年は男女ともに人数が奇数人の年…つまりどこか1組は強制的に交換日記を異性とすることになる。

そしてその貧乏くじを引いたのが私と東雲くんという訳だ。


私たちで組むなら既に付き合ってるリア充様たちでやればいいのに……



東雲 玲(しののめ れい)

中学の頃から不良として他校の私の中学でも噂されていた。

中学生なのに高校生とタイマン張ったとか同学年には敵無しとか……


確かに噂通り髪は茶髪っぽいし見えないけどピアスくらい開けてそう…それに態度もなんだか威圧的に感じるし俺様っぽい感じもある……

なのに無駄に顔が整ってることで女子の1部には熱狂的ファンがいるとか……


「おい何見てんだよ。とりあえず俺から書き始めるから。日記は朝に靴箱んとこに入れとく。あーーえーっと…お前名前なんだっけ?」

日記を手に取って既に歩き出しそうな東雲くんがそう言う。

「栗栖川凛(くりすがわ りん)」

名前も覚えて無いわけ?一応同じクラスだし自己紹介もあったのに……

「栗栖川?珍しい名字してんな。漢字どう書く?くりはあの栗きんとんの栗?すがわは……有栖川有栖のすがわ?」

東雲くんは不思議そうに眉をひそめてそう聞いてきた。

「有栖川有栖?って誰??」

東雲くんの口から出る知らない単語に私はアホらしく聞き返してしまう。

「有栖川有栖も知らねぇの?あーーあのほらこの漢字であってる?」

一瞬バカにされた気がするけど東雲くんは親切にもスマホで有栖川有栖と打って見せてくれた。

「栗栖川のすがわってこの字?」

「あ、うんそれ。」

「りょーかい。じゃあ今日からよろしく」


そう言って私の漢字を確認するとぶっきらぼうにスタスタ歩いていってしまう。

なんだ?噂より普通に親切じゃない??あれ?



うーんでも…やっぱり女の子と交換日記したかったなぁ……せっかく友達作るチャンスだったのに…

ガックリとうなだれてため息をついた。