あの男が、新幹線で三時間掛かる所に引っ越して二ヶ月が経つ。男と私は、その間に十数通の文通をしていた。
私は今時、文通なんて微妙だと笑ってやったが、男は「いいんだ、やろう」と真顔で返して来た。
男との文通は、やはり温度差が激しかったのを覚えている。男は最低でも五枚の手紙を送ってきたが、私は一枚で返していた。「最近、〜〜があった。楽しかった」などとしか私は書けずにいたが、男は小説のように、頭の悪い私でも容易な想像出来るような文章で、長い文章を苦痛と考えずに読む事が出来た。
メールが普及しても、私と男は手紙のやりとりし続ける。楽しくなって、私も二枚は書けるようになった時期もあったが・・・やはり飽きという感情には逆らえず、手紙をあまり返さなくなった。