右手に、桜河の冷たい手が触れる。
桜河は下を向いたまま、私と目を合わせようとしない。
そしてそのまま私の肩に頭を乗せた。
「おう────…」
「───……おーい、着いたぞー。」
桜河の名前を呼ぼうとしたその時、前から光雄じいちゃんの声が聞こえる。
「あー!やっと来た!」
そして遠くから聞こえた咲花の声。
近づいてくる足音。
…この状況…なんか浮気現場っぽい…?
私は咄嗟に桜河から離れて、カバンから取り出したタオルを桜河の顔に掛けた。
「おい、なんだよこれ。」
顔に掛けられたタオルを取って、こちらをキッと睨む桜河。
「泣き顔、見られたくないのかなと思って…」
「泣いてねぇわ、アホ。」
私にデコピンをしてから、桜河は荷台から降りていく。
…私なりの親切心だったのに…。



