「でも────…」





「─────離してよ。」














自分でもびっくりするくらい、低く冷たい声だった。





私も、自分がこんな声を出せるのだと初めて知った。

ましてや、大好きな柊吾に対して…











「行こう、市原くん。

もう練習始まっちゃうよ。」








柊吾の手を振り払って、市原くんと共に体育館倉庫を出る。












「香純っ───……!!」









後ろから柊吾が私を呼ぶ声が聞こえたけど…
私が後ろを振り返ることはなかった。


私たちが戻ったとほぼ同時に、練習開始の合図がかかる。






それからは、ひたすらマネージャーの仕事に集中した。








じっとしていたら、余計なことばっかり考えてしまいそうだから…



今柊吾と会ったら、酷いことを言ってしまいそうだったから…


朝と昼も夜も、暇さえあれば仕事をした。





そして、あれから一度も柊吾と会話をすることなく夏合宿は終わっていった。