「香純…」










何かを伝えた気な表情をする柊吾と目を合わせないように、スコアボードを運び出す。











「ごめん、市原くん。

そこのビブス運んでもらっていい?」







「あぁ、わかりました。」










何事も良かったかのようその場を離れようとする私の腕を、柊吾は力強く引いた。










「…香純、ちょっと待って。」









私が大好きなこの大きな手も、低くて優しい声も…


今の私には、不快でしかなかった。











「ごめん、柊吾。…今、忙しいの。

もう練習始まるよ?柊吾も戻りなよ。」










ここは体育館倉庫。

市原くんや桃奈さんもいる。





それに、部員たちは私と柊吾の関係を知らないし…会話を聞かれたら困る。




できるだけ冷静に。

ことを荒立てないように……