私は目の前が真っ暗になって、不意にあの海岸での桃奈さんの言葉が頭を過る。
〝でも彼女さん、大変でしょ?〟
〝 柊くんって奥手そうに見えて…
──────キスも、夜も激しいし♡〟
やだ…やだやだ。
気持ち悪い…。
なんで今、あの言葉を思い出すの?
柊吾のことを信じるって決めたじゃん…
「…成宮さん、顔色悪い…。
大丈夫っすか?」
心配してくれる市原くんに、私は今できる精一杯の笑顔を作って見せた。
「ん?なんでもないよ!
…ごめんね、柊吾。
スコアボード取りに来たんだ!」
本当は今すぐにでもここを離れたかった。
だけど、もう少しで練習も始まる。
…準備しないと。



