「あ、体調は大丈夫そうですか?」
「はい、だいぶ良くなりました。」
よかった。
顔色もさっきより随分楽そう。
「ありがとうございました。
…それから、すみませんでした。
俺のせいで引き止めちゃって…」
彼は申し訳なさそうに謝った。
正直、高校1年生から日本代表として活躍している選手なんて、高飛車で自分の才能を鼻にかけたような人を想像していた。
でも彼は全く違って……
礼儀正しくて、謙虚。
見るからに真面目そうな好青年だった。
「じゃあ…私、そろそろ行きます。
水分補給はきちんとしてくださいね?」
「あ、あの…ハンカチ……」
ゆっくりと立ち上がる私を、彼は腕を掴んで引き止める。
「それ、あげます。
…では、またあとで。」
私はそれだけ言って、一礼してからその場を去った。
「またあとで…?」
不思議そうに呟く彼の声が、後ろから聞こえたようか気がした。



