─────…ヴー…ヴー……
スマホのバイブ音で我に返る。
「…あ!ごめん、私だ!」
顔を上げてスマホを探す彼女に、俺は慌ててその手を引っ込める。
…何やってんだ、俺。
今日は触れない約束だろ?
あのまま触れてたら…きっと…
「…なーんだ、桜河か。
‘コンビニ寄るけど何かいるか?’って…
……え!?水泳部の練習が終わってる!?」
急に大きな声を出す香純に、俺の体もビクリと軽く跳ねる。
水泳部の練習…?
てゆーか、なんだ?
その同棲中カップルみたいな会話は…。
「…もう7時過ぎてるじゃん!
ごめん、柊吾!時間見てなかった!」
桜河の練習スケジュールまで完璧に把握する彼女に、正直少し嫉妬する。
いくら幼馴染みで、ずっと隣に住んでる姉弟みたいな存在だって言っても……
普通練習の日程まで把握するか?
でも器の小さい男だって思われるのが嫌で、いつも以上に冷静を装った。
「いや、俺は全然良いけど?」



