「これは全部、夏の和菓子なんだ」

「この金魚の寒天はきれいじゃのう」

「ああ、これはね……」

圭はお菓子を一つ一つ説明してくれた。

寒天の中に金魚が浮かんだお菓子は、錦玉といい寒天に水あめや砂糖などで甘みをつけ、型に入れて固めたものじゃ。その見た目はとても涼しげじゃよ。

あゆは、鮎の旬の時期に作られる夏の定番の焼き菓子じゃ。鮎を模した生地の中には、小豆餅や求肥餅が包まれておる。

白餅をベースに季節の情景を象ったものは、ねりきりじゃ。夏に人気のモチーフは夏を代表する植物の一つの朝顔。薄い紫をした見た目が涼しげじゃのう。

どれもおいしそうでワシには選べん。その時、梅子が「どうぞ」とお茶を出してくれた。

「ありがとう」

ワシはそう言い、じっと和菓子を見つめる。迷ってしまう……。

「圭、お前が先に選びなさい。お前が持ってきたのだからな」

ワシがそう言うと、圭は「えっ、いいの?」と訊ねる。ワシが黙って頷くと、圭はそっとあゆを手に取った。