「いえ、何も。よろしくね、奥沢さん」


「はい、天李さん」


無視して奥沢さんに挨拶すると、土方さんはまた顔をしかめて、手で扇いだ。


この時はまだ、少し面倒なことになった、くらいの認識しかもっていなかった。


とにかくそれから奥沢さんと一緒にいる時間が多くなったわけだけれど…。


まあ、監察方でもない、密偵の経験もない人だからしょうがないのかもしれないけれど…。


この人は何というか、その…はっきりいってしまうと、下手だった。


言葉通り、つきっきりで私の側にいるのだ。