昨夜、自らが落とした“これ”を見に来て、木の根元に腰を下ろしたことまでは覚えている。


そのまま眠ってしまったのだ。


扇の持ち手にぽっかりと空いた穴の縁を、指でそっとなぞる。


燃え盛っていた炎はすっかり消え、耳をすますとざわざわと野次馬の声が聞こえた。


「ここにいたのか、天李」


「斎藤さん」


一晩中火消しや後始末に走っていたのだろう、斎藤の目には隈が色濃く表れていた。


「そろそろ屯所に戻るらしいぜ。…まあ、帰ったらお前には尋問が待ってるだろうがな」