天李は驚いたような目で俺を見ていたけど、しばらくして、悲しそうな、嬉しそうな、呆れたような顔で笑った。


「ありがとう」


開いた窓から、ふわりと花の香りがした。


去っていく天李の後ろ姿を見て思う。


天李は、とても不安定だ。


一見自分をもっている強い人に見えても、本当はおぼろげで危うい。


今にも壊れてしまいそうなのを、心の底の野望が無理やり繋ぎとめている。