幕末パラレル物語

天李side


気遣いもなくずんずんと進む背中を小走りで追いかける。


文句も言えない。ため息をつきたいのを堪える。


「さて、あまね。まずはその取り繕った話し方はやめろ」


…見抜かれた。


「いえ、私は…」


「儂は子供に対しその程度の気遣いもさせるような、器の小さい男ではないぞ」


どの口が、と言いたくなったけれど、さすがに自重する。


事を荒立てるのが得策でないことは、先程の斎藤さんの態度を見ても明らかだ。


「…分かったわ、芹沢さん。でも子供扱いはやめてほしいわね」


「ふん、儂からすれば子供だ」


鼻で笑う芹沢さんをちらりと見上げる。私より一回りも二回りも大きな体。


半ば勢いでついてきたけれど、今になって焦っていた。


ーーもし芹沢さんの怒りに触れ、暴れ出したらどうしようか。


自分だけならともかく、周りも巻き込むようならそれも守らなければならない。


…無理だ。


ただの直感ではあるが、この人には敵わないと感じていた。


私は体術を交えて相手を乱し急所をつく短期決戦の戦い方を基本とする。


けれど、それは言わば初見殺し。


相手が慣れてしまえば単純に力のない私の勝ち目は薄い。
事実近藤さんなどは最初の手合わせ以来、稽古をしても指一本触れさせてくれないのだ。


そして芹沢さんは一瞬でやられてくれるような人ではないだろう。


銃があればどうにかなったかもしれないが、ただの買い物にあんな物騒なものを持ち歩いたりしない。