幕末パラレル物語

有無を言わせない力強さに、気圧される。


斎藤さんも珍しく言葉を詰まらせているようだ。


一方で、私は奇妙な感情を抱いていた。


これが芹沢鴨なのか、と。


あの夜鉄扇で人をなぎ倒していた、身勝手に火をつけた人間。


もっと横暴で、幼稚で、どうしようもないような人物だと思っていた。


最も、それだけで局長の座につけているわけがないと分かってはいたけれど。


今自分の目の前にいるのは、壬生浪士組を作り上げた一任者と言われる芹沢鴨、その人に間違いなかった。


…知りたい。


「…承知致しました。お供させていただきます」


「て…あまね、何を」


斎藤さんがギョッとしたようにこちらを見た。


「来い、こっちだ」


しかし当然のようにさっさと踵を返す芹沢さん。


自分本位な人間であることは、間違いないようだ。


けれど、それだけではない、ような気がする。


呆気に取られる斎藤さんに軽く手を合わせて謝意を示し、私は芹沢さんの後を追った。