幕末パラレル物語

「それにしても…」


ふいとこちらを覗き込まれた。


思わず半歩下がる。


ただ目があっただけなのに、この戦場のような緊張感は一体何なのか。


「斎藤が女を連れ歩いているとはな。名は」


「…あまね、と申します」


咄嗟に偽名を名乗り、首を垂れる。


少し声が掠れた。


「ほう、上玉を引っ掛けたものだ。斎藤も見かけによらず、中々のやり手よ」


「…どうも」


さすがにこの流れを断ち切るつもりはないらしく、斎藤さんも適当に合わせる。


芹沢さんはもう一度私を眺めると、本当に突然こう言った。


「ちょうどいい。この年頃の娘を探していたのだ。あまね、これから儂に付き合え」


「は」


思わず声が漏れる。


何を言っているの、この人は。


唐突すぎる誘いに驚く私を庇うように、顔をしかめた斎藤さんが一歩前に出る。


「芹沢局長、それは」


「案ずるな、取って食ったりはせん。それに、お前には聞いていない」


しかし芹沢さんはばっさりと斎藤さんの言葉を切り捨てた。