幕末パラレル物語

天李side


「ーーもし、そこにいるのは、斎藤か?」


その声に斎藤さんは一瞬露骨に嫌そうな顔をしたけれど、すぐにすまし顔になって振り返った。


「どうも、芹沢局長」


言いながら、そっと私を隠すように立つ。


…芹沢局長。


これは、まずいのでは。


私の性別や顔は漏れていないということだけれど…。


冷や汗が出る。


とはいえ逃げるわけにもいかない。


いや、逃げられない。


彼の放つ威圧感が、完全に私の逃げ道を塞いでいた。


「大坂の時以来か。もう腹の調子はすっかり良くなったようだな」


「…ええ、おかげさまで」


当たり前だろうが、という斎藤さんの本音が聞こえてくるようだった。


どうも斎藤さんは、芹沢さんが嫌いらしい。


…おそらく近藤派というのとはまた別に、個人的な理由で。