斎藤side


天李の機嫌がいい。


何がそこまで楽しいのか、俺には分からない。


「…天李、さっさとしろ。俺は子守りに一日費やすつもりはねぇ」


右往左往している天李に、狭い店の入り口からため息混じりに声をかける。


「分かってる。分かってるのよ、けど…刀には詳しくないから、どれを選べばいいのか…」


眉を寄せながらも、輝きを隠しきれていない天李の視線の先にあるのは様々な小太刀だ。


痺れてきた足を組み替える。


まあ、嬉しそうに悩むものだ。


先程の言葉にも、その瞳にも、嘘はないのだろう。