苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。


「『逃げるのだけは得意な馬鹿は引っ込んでいろ』と伝えておいて」


「承知しました」


男はまるで機械のようにそう答え、するりと去っていく。


その姿が見えなくなるのを確認して、天李はふっとため息をついた。


そして、


「それに、命を賭ける対象は、幕府ばかりではなかったみたいよ」


と呟いた。