しばらくして、ため息が聞こえた。


「…奥沢さん、やっぱりあなた、こういうの向いてないわよ」


声の雰囲気が変わった。


ゆっくりと目を開く。


まっすぐな瞳がこちらを見返している。


思っていた以上に、優しい視線だった。


「やめるなら今のうちだと思うけれど」


小さな声でそう呟いて、天李さんは歩いていってしまった。


しばらく、動くことができなかった。


ただ、考えなければいけないことが多すぎるということだけは、痛いほど感じた。