「仕方ないなぁ、わかったわよ」

ハァ、やっぱり断れない性格は損だ。

「どうなっても知らないからね。それに恋人の振りなんてずっとは続けられないよ? 私だってまだ結婚する気なんてさらさらないんだから」

「大丈夫だって、恋人の振りっていっても……愛美ならきっと大丈夫だと思う」

なにを根拠に“大丈夫”なんだか……もう、どうなっても知らない!

なんて言いつつ、呑気ににこりと笑う優香を見ていると不謹慎にもちょっと面白くなってきたかも……なんて気になってくる。

会社に行っていつもの仕事をして、ピアノを弾いて帰宅しての繰り返しの平凡な日々、降って湧いたような“刺激”に私は、戸惑いと不安の中に人知れずワクワクしたものを感じていた。

ほんの少しだけ――。