「話してしまったこと、怒らないんですか?」

「怒るわけないだろう? こういうことは、ずっと隠し通せるものじゃない。いずれ折を見て、俺からお父さんに直接話そうと思っていたんだ。俺は誰になんと言われようと、君を手放すつもりはない。けど、結局、君に嫌な役目をさせてしまったな……すまない」

手放すつもりはない。そう言われて心の底から安堵する。

水城さんの懐の広さに、いつの間にか涙が頬を伝っていた。それを彼がやんわりと目を細めて親指で拭う。

「俺は君を愛している。君が大切にしているものすべてを守りたい。それが愛することだと思ってるからな」

「水城さん……」

「だから、こうやって涙する必要もない。君が胸を痛めて心配することなんか何もないんだ」

やっぱり、彼を好きになってよかった。自分の選択は間違ってはいなかった……。

愛おしさが募ると、私はたまらず水城さんの胸にしがみついてぎゅっと抱きしめた。

この温もりを、手放したくない……。

「私も、愛してます。水城さんと……どんなことがあっても、離れたくない」

顔をあげると、キスの予感に目を閉じる。そんな私に応えるように、水城さんの柔らかな唇が私のそれに重なった。

「愛美……」

彼の声で名前を呼ばれてドキリとする。今まで自分の名前が、こんなにも耳に心地よく聞こえたことはない。