ほんの少しでも親子の絆を思うのなら、あんな酷いこと言えるはずない。父にとって私はやはり、赤の他人でしかないのだ。そのことが悲しくて徐々に瞳を濡らす熱いものを、私は唇を噛んで堪えることしかできなかった。

「お願い、優香の幸せを壊すようなことだけはしないで」

震える声で訴えると、父はゆっくりと口を開いた。

「お前は、今水城君と付き合っていると、そう言ったな? お前は幸せなのか?」

「え……?」

父が私の幸せを気遣うことを言うなんて意外だった。その問いかけに私は小さく頷く。

「優香の幸せを願うなら、お前の幸せとやらと引き換えだ。水城君と別れなさい。付き合っているだと? くだらん。彼も一時の迷いに過ぎない。だから、もう一度優香と見合いの席を設けて仕切り直すつもりだ。だからお前は身を引け、いいな?」

「そ、そんなっ!」

言ってることめちゃくちゃだよ……。

父が私を気遣うなんて、よくよく考えたらそんなことあるはずがなかった。一瞬でも嬉しいなんて気持ちを沸かせた私が馬鹿だった。

十年という月日が、私たち親子を簡単に他人に変えてしまったのだ。

私と優香の幸せを天秤にかけるなんて……。