かけがえのないものに、代わりなんてない

「くーろかーわ先輩っ!」

「お、雅」


いきなり下の名前で呼ばれて、なんだか胸がくすぐったい。

私に雅という名前をつけてくださって、お母様お父様神様仏様ありがとうございます。
紙吹雪がヒラヒラ舞う様子が目に浮かぶ。




黒川先輩は、ボケーッとしている私をおかしく思ったのだろうか。

「何の用?」
そう聞かれて言葉に詰まる。


昨日の話を聞いて、黒川先輩のとこに行かなくちゃ!って思ったんだけど、特に用は無い……な。





諦めたような表情になった私に、黒川先輩はゆっくり息を吐いた。



「サキの話聞いた?」

「き、聞きました。昨日の放課後薺先輩から」

「ふぅん……そっか」


黒川先輩はペン回しをしながら問題集のページをめくった。