「サキ!サキ!」



大きな男声に振り返ろうとした時、背中がフワッと温かいものに包まれた。



「サキ……会いたかった…………」


震える声が、私の肩にポロポロと降ってきて、思わず振り返ると。



「く、黒川先輩!?」

「ごごごごごごごごごめん!」

私に抱きついていた本人の黒川先輩は、いつものクールさを忘れたのか、すごい速さで遠ざかった。




「黒川先輩、さっきの、何なんですか?」


いくら学校一イケメンで、クールで、でもそこがよくて……の先輩でも、さすがに知らない後輩に抱きつくのはヤバいでしょ!?



「サキって誰なんですか?
私の名前、(みやび)なんですけど!」


詰め寄っても、先輩は俯いたまま、一言も喋らない。