君は紅茶を飲みながら、少し恥ずかしそうにモジモジしている。

 「どうかしたの?」

 「うん…、私ね、望さんに言わないといけない事があって…。仕事、また始めるの。」

 「仕事探していたの?」

 「うん。あんなに迷惑かけたのに恥ずかしいんだけど。」

 「良かった。ひなが頑張りたいならそれが一番いいよ。」

 「支えてくれる?」

 「勿論。」

 君は嬉しそうに俺に抱きつく。

 「望さん、ありがとう。」

 「ひなが自分で頑張ったんだよ?」

 「うん。でも、ありがとう。」

 良かった。君はこれから随分元気になるだろう。君を愛する世界があるって、忘れないで。

 「私、もう前と同じ仕事しないようにするって決めたの。何度も苦しんだから。そうしたら、やっと前を向けた。それは、望さんのお陰。」

 「ひなは女の子だから。とても苦労したね。」

 君を腕に抱きながら背中を撫でてやる。

 「ひなが前に進めるようになった事が、一番嬉しい。」

 「望さん…。」

 「でも、まだ無理しないで。」

 「うん。」

 「ゆっくり慣れて。」

 「うん。」

 「でも忙しい新婚生活になるね。」

 「嫌?」

 「ううん、嫌じゃない。ひなと一緒ならそれでいい。」

 君は少し恥ずかしそうに口を尖らせる。

 「でも、あんなに暴れてて、馬鹿みたいだった。」

 「暴れて?」

 「初めて会った時、大暴れして船乗ってて、勢いでデートしたり、色々。」

 「でも、可愛らしかったよ。」

 そう、それさえも可愛らしかった。

 「これで望さんに迷惑かけないで済むのが嬉しい。」

 その健気さ。君には矛盾が同居してる。美しさと可愛らしさ、優しさと強さ。

 「ひな、どんなひなも俺は大好きだよ。俺のひなは、とてもタフで、美しい。」

 君はキョトンとして。自覚が無いところもとても可愛い。でもそれは俺だけの秘密だから。

 「お祝いしないとね。」

 君は俺の胸に顔を埋めて、小さく言った。

 「いいの。喜んでくれたらいいの。」

 俺は優しく君の頭を撫でてやって、唇を重ねた。

 「ひな、頑張ったね。」

 君はホッとした顔をして。

 「疲れちゃった。」

 「お疲れ様。」

 君を優しくベッドへ促す。すぐに君はウトウトして眠ってしまう。君の心の傷は癒えたのかな。でも、前に進もうと決めたんだね。