玄関に入ると君はちょっとだけ握る手に力を込めて。そして苦しそうに言った。

 「私、呪われてる。」

 少し驚いて、でも、君とずっと一緒に過ごすと決めたから。

 「俺のひなは、呪われてない。呪われてるなら、俺だけは呪わない。」

 君は俯いて、視線を泳がせて、そして俺に抱きつく。良かった、君は消えないで俺の腕の中を選んでくれた。愛おしい君を何度も何度も撫でて。

 「ひなは呪われてるの?」

 「うん、親子で合わない。だから、独りぼっちで過ごしてきた。嫌いだから無意識に突き放す母親と、機嫌によって発狂する父親のせいで、私は攻撃しても良い奴って思われてた。」

 「味方になってくれる人、誰もいなかったの?」

 「うん。」

 君の自由さ、君の気高さ、君の強さ。それはそんな悲しい過去から作られたものだった。

 「俺は呪わない。ひなが攻撃されたら守ってあげる。ひなが優しくされたり、好意を受け取るのが苦手なのはそのせいなんだね。」

 「望さんは、そう思うの?」

 「うん、そう思う。でも、だからこそひなが愛おしい。」

 俺は優しくキスをする。キスを繰り返して何度も頭を撫でてやる。

 「でも、それに負けずにこんなに美しく育った君は奇跡みたいに強い。」

 「でも、迷惑かかるかも。」

 「いい。家族になるんだから。」

 君は頬を赤くして、呆然と俺を見つめる。