君は野菜を刻みながら、口ずさんでいた。俺は後ろから君を抱き締める。

 「やっぱり手伝うよ。」

 「望さん…。じゃあ、コーヒーお願い出来るかな?」

 「いいよ。」

 湯を沸かしながらフィルターにコーヒーを入れる。

 「ひな、何作ってるの?」

 「スープよ?野菜を採らないと。」

 君は手際良くスープを作りながらオムレツを焼く。ベーコンも焼いて、パンをトースターから出す。あっという間に朝食の完成だった。

 「簡単で悪いけど。」

 「十分だよ。美味しそう。」

 「良かった。」

 君は微笑んでダイニングへ朝食を運ぶ。

 「手際が良いね。」

 「そう?慣れなんだよ?」

 君は優しく微笑んで言う。

 「望さんの淹れてくれたコーヒーも美味しいな。」

 「ただお湯を注いだだけだよ。」

 「でも、おいし。」

 コーヒーを飲みながら嬉しそうにしている君の為に何かしてやりたくなる。

 「ひな、ランチは俺が払うよ。」

 「望さんが?」

 「うん。」

 「じゃあご馳走になろうかな。」

 君の頭を撫でて、朝食に手をつける。君はバランスの良い食事を心掛けている様で、ちゃんと野菜を採る。

 「ひなと一緒だと健康に良いよ。」

 「前はあまり気にしなかったんだけど、自分を好きになって、大事にしてあげようって思ってから、色々始めたの。」

 「じゃあ、その最中に俺に出会ったの?」

 「そうよ。まだちゃんとしてないのに、望さんに出会っちゃった。変なの。」

 「じゃあ便乗するよ。」

 二人で笑いながら食事をした。