「ひな、終わりそう?」

 声をかけると、綺麗に化粧を施された君が振り向く。紅い唇が映える。思わず息を飲むと君はきょとんとした顔をする。

 「変?」

 「似合うよ。」

 嬉しそうに微笑んで、君は店員さんにお礼を言って立ち上がる。そして、俺の腕を取る。

 「顔はこれで大丈夫。」

 「じゃあ、服を買おう。」

 「んー、何でも良いんだけど…。」

 「ひなのワンピース姿を見てみたい。」

 「ワンピースかぁ、どんなのにしようかな…。」

 「行こう、ひなの可愛い姿を見たい。」

 君と婦人服売場へ向かう。君はあれこれ視線を向けるけど、迷っていた。

 「ひなの服はいつもどこで買ってるの?」

 「実は通販が多いの。」

 「確かに、ありそうで見ない服が多いもんね。」

 「そうなんだよね…。」

 君はネイビーのワンピースを見つけて立ち止まる。

 「試着しておいで。」

 頷くと、君はワンピースを手に取り、店員に声を掛ける。店員はすぐに試着室へ案内する。

 「お似合いになると思いますよ。」

 頷くと店員も微笑む。君は無条件に好かれる人なんだと思う。

 「…どうかな?」

 試着室から出てきた君はとてもシックだった。白い肌にネイビーが映える。

 「似合うよ、ひな。そのまま着ていこうよ。」

 店員が笑顔でタグを切る。君はとても上品で、愛らしい。

 「会計してくるよ。」

 会計を済ませて戻ると、君は着ていた服を紙袋に入れて貰っていた。

 「ありがとうございました。」

 君と手を繋いで店を出る。

 「他に欲しいものは?」

 「もう十分だよ!」

 君は慌てて言う。君の耳元でそっと囁く。

 「綺麗だよ、ひな。」

 「望さん、気に入った?」

 「うん、素敵だよ。」

 君は幸せそうに微笑む。全く、君はとても性格が良い。

 「ひな、少し早いけどランチしよう。」

 「うん。」

 俺達はレストランフロアへ向かった。