ブッフェはあまり混んでおらず、奥の静かな席に案内される。他の客は君をジロジロ見る。君はそっと俺に耳打ちする。

 「どこか変かな?」

 少し苦笑して頭を撫でる。きっと君は自分が綺麗で見られてるだなんて夢にも思ってないから。

 「取り合えず、コーヒー飲みたいな。」

 コーヒーを注いで席へ置きに行こうとするとウェイターが笑顔で運んでくれる。君は笑顔で礼を言うけれど、通常には無いサービスを受ける君に少し驚く。君はどこでも特別なんだなぁと思う。

 「お腹空いたから、クロワッサン食べたいな。」

 皿に卵とベーコンと野菜を盛って、正しい朝食をチョイスする君はとても上品に見える。

 「スープも欲しいな…。」

 さっきコーヒーを運んだウェイターがまた皿を運んでくれる。結局君はその後、スープとデザートを追加していた。

 「良く食べるなぁ。」

 「だって、釣りって結構体力勝負なんだよ。でも昨日はあんまり食べなかったからお腹空いちゃったよ。」

 「いっぱい食べて。」

 君はお行儀良く、スープを飲む。ナイフとフォークの使い方も完璧だった。

 「ひなさんはお行儀良いね。」

 「うーん、そうかな。」

 俺は正直、驚いていた。上品さを持ちながらも子供のような行動をする君に。君は相反する要素が同居していた。

 「チェックアウトしたら、一緒に帰らない?車で送るよ。」

 「いいの?」

 「うん。でも少し観光に付き合って貰う事になるかな。」

 「了解!」

 俺達は朝食を食べて部屋に戻った。