「どう?素敵でしょ?」

キロがすみれの顔を覗き込む。すみれは「ま、まあね」と顔を赤くしながら言う。素直に思ったことを口に出せない。

キロは微笑みながら、すみれを次の観光地へと案内した。

次にやって来たのは、中央市場。海岸線の長いチリは、海産物の宝庫だ。常に人にあふれているという。

「すごいわ……」

すみれは予想以上の人の多さに戸惑う。すると、キロはそっとすみれの手を握った。

「はぐれないで。さあ、行こう」

つながれた手はすぐに熱くなる。競りや客引きの声を聞きながら、すみれはキロと市場を回った。

お昼になり、二人はベラビスタへと向かう。ベラビスタはおしゃれなカフェやバーが立ち並ぶエリアだ。

「ふう〜……。けっこう歩いたね〜」

コーヒーを飲みながらキロが言う。すみれもコーヒーを飲み、「私はまだ大丈夫よ!」と強がる。でもキロはニコニコ笑ったままだ。

キロとのデートは、今までしたデートの中ですみれは一番楽しいと思った。その気持ちを言いたい。でも、伝えられない。もどかしい気持ちにすみれは自分が嫌になる。