episode1*




私は、鈴木 幸。


『 幸 せ 』 の漢字を一文字にして『 幸 』っと
私の名前にはついているけれど、、

実際に幸せ?かと言われれば、実際そうでもないし、むしろ不幸だ。

子供の時から、22歳になる今まで
ずっと孤独で生きてきた。

父はDV男で、私が15歳の時に母と離婚。

母は、その後、私が19歳になった誕生日の日に病気で亡くなった。

今は一人暮らし。

タクシーを配車する(オペレーター)仕事に勤めてる。
22歳の私は最年少で、次の先輩はというと40代からであるこの会社。

だから友達なんてもの、できっこない。

でも人間関係を作ることが苦手な私にはお似合いだと思ったからこの会社に入社した。




また今日も、人特有の上部の付き合いの会話が ザワザワ…と…


お昼休憩で会社の屋上に出ても、寄り添って話してくれる人だっていない。つまり孤独だ。


でも別に、この生活を後悔した事なんて一度もなかった。
友達が居なくても、デメリットな事もあれば、メリットな事もある。

人にたいして、深い感情を抱かなくたっていいし、めんどくさい事だって起きない。

だから、ひとりでもいいって思った。

………なんて………

本当は強がり。……


ひとりが駄目で、孤独で、寂しかったから、


きっと今、私は死のうとしてるんだ。この屋上で。


とても気持ちいいようで、とても自分の存在に冷めきったような風が
私の長い髪を 揺らしている。

ーーー涙がとまらない、。ーーー

「 もう終わり…だ… 疲れちゃった… 」


昔、何回も自分の存在が嫌になって
カッターで切り刻んだ 痛々しい手首の傷跡を見ながら、呟いた。

今日まで、死にたいと思った事は数えきれないほどだった。


私を必要としてくれる家族も、友達も、作りたかった恋人でさえ、いない。


そう考えれば、考えるほど、この先、孤独で生きて行くのが怖かった。

今の私は、まるで 地味で、
これといって目立つ所がないメダカみたいだ。

「 フフッ… 笑 」

自分に呆れて、涙も枯れて、笑いがでた。
生きて行く事を諦めた 私は、


おそるおそる 少し震えながらも一歩ずつ…
この屋上から飛び降りようとしていたその時、、、


「 なにしてんの? 」


私の背後ろから、男の人の声がした。

ー それが " 海野 翼 " (うみの つばさ )、トビウオ との初めての出逢いだった ー


振り返ると、高身長で細くて、髪の毛はワックスをつけていて襟足がながく金髪で
どうみても、チャラそうな男のひとが立っていた。


こんな若くて、ピアスも3つか2つ空いてる
チャラい感じの会社員いたっけ?…と疑問に思ったけど、

私はすぐさま、自分の現実に戻って おかまいなしに 落ちようとした瞬間、

「だから何してんの???」

思いっきり腕を掴まれて、フェンスから降ろされた。

「邪魔しないでください…」

「いやいや、邪魔とかじゃなくって
目の前で、こんな事されたら誰だって止めるでしょ!」

「……。」

私は思わず、我慢ができず、降ろされた瞬間、涙が止まらなくなった。

「どうしたの?何かあったの?大丈夫?」

と、さっき出逢ったばっかりなのに私を心配してるような顔。

だけど私はそんな事より、自分の今までの事を振り返ったりとか
見られている恥ずかしさで 何も言えず、ずっと涙がとまらない状態が続いた。

すると、
いきなり"グイッ"っと、その男の方へと腕を引っ張られた。


と、その瞬間ーーー。

その男が、泣き顔の私の唇に、唇を重ねた。


それが 翼 との、人生初めてのファーストキスでした。




episode1 おわり*