月は夜に恋をした

本を持ったまま、なんとか声を出す。


「…だ、だいじょうぶ」



木下は私の後ろから、私の持っている本を覗き込む。



「っ、これ…」


なんだろ。どうかしたのかな。木下も知っている内容だったのかな。


「とにかく、あの2人んとこに戻ろう」


本を棚に戻して、歩き出そうとして、木下の制服を掴んだ。


「…ごめん。もうちょっとだけ、ここにいて」


まだ、戻れない。落ち着かないと。夏苗に心配かけられない。




大丈夫。私は、「生きて」いる。




木下は何も言わずに私のそばに寄ってきて、本棚に寄りかかった。