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意外なことに、僕は山下くんとかなり仲が良くなっていた。同じ大学出身ということもあるが、スポーツ好きの点も一致している。同性ということで話も合う。
最近の仕事終わりは、清水さん抜きの、僕と山下くんで飲みに行くことが多かった。清水さんはぶー垂れているが知ったことではない。僕は男だから恋愛面で多少奴がだらしなくても関係がないことだった。
そして、清水さんはというと、相変わらずアクティブだ。
初夏。海開きが行われる頃。清水さんは朝からテンションが高かった。就業時間二十分前、おはようございます、と各所に挨拶しながら席に着くと、珍しく清水さんは先に席についていて、使用端末を立ち上げていた。
なんだろう、と思っているうちに、山下くんも出社してきた。すると、清水さんは待ってましたとばかりに僕たちを呼び寄せた。
「夏といえば? はい、西村くん」
「え? スイカ」
「ブッブー」
うわあムカつく。指で顔の目の前にバツを作り、かわいこぶって首を傾げた清水さんにただのムカつきしか感じなかった。
「はい、山下くん!」
「海ですかね」
「正解! じゃあ、海、行くよ!」
なぜ休みの日まで職場の人間と顔を付き合わせなきゃならない、と僕はげっそりとしたが、清水さんに逆らえるわけがなかった。それは山下くんも然りだ。
ムカついたものの逆らうことはできず、このままではやってられないと思った僕は、天命のように悪魔のアイディアを思いつき、にやりと笑った。
「流石に三人で海はちょっとと思うので、誰か後一人くらい誘いませんか。今男二人だから、女の子が一人欲しいですね。あ、そうだ。牧さんはどうでしょう?」

