愛される価値?
僕は眉を寄せた。彼女にはその価値がないと言うのか。彼女は自分をそういう風に思っているのか。まさか。
その時、どーんという音とともに、夜空に花火が打ち上がった。とても大きな鮮やかな花火だ。場内アナウンスで今から二十分間の花火打ち上げが始まると言う。
「......折角きたんです。行きましょう」
僕は清水さんと一緒に海沿いの観覧席に向かった。彼女は無言で頷いた。
次々に打ち上がる花火は、夜空に刹那の花を咲かせ、一瞬で散りゆく。その儚さに人々は目を奪われ、心を焦がす。綺麗だね、綺麗だな、と笑顔で立ちすくす者たちばかりだ。
彼女は夜空を見上げていた。きっと、誰からも愛されるような打ち上げ花火になりたかったのだろう。例えば、牧さんのように。
しかし、彼女は打ち上げ花火にはなれなかった。彼女はじりじりと剣呑な火花を散らす、地面に咲く花に過ぎなかった。彼女も、それを分かっていて、打ち上げ花火になる夢を見た。
「清水さん」
「なに?」
あいも変わらず鼻声である。
「泣かないでください」
彼女は止めどなく涙を流していた。ハンカチで涙をそっと拭うと、彼女は顔を背けた。なんであなたが隣にいるのよ、と涙声のまま文句を言い始めたが、恥じ入っているからだというのは理解していたため、僕は何も言わなかった。
「僕が隣にいたらダメですか」
「......」
彼女は虚を突かれたように顔を上げて、僕を見上げた。
だから、その目で僕を見上げるなと何度言えば......。
「......清水さんは、いつも可愛いですよ。たまには、僕が貴女を見る分くらいは、僕を見てくれませんか」
言いたいことを一気にいうと、僕はじんわり頰が熱くなるのが分かった。
くそ、この人が泣いているせいで調子が狂う......と頬をかいた。
しばらく、清水さんは硬直していた。花火を見ることも忘れたらしい。何を言われたか分かっていないのか、もう一度言うしかないようだと覚悟を決め、「清水さん」と体ごと向き合うと、彼女はハッとした様子で焦ったように「待った! ちょっと待った!」と言った。
「わ、私のこと嫌いなくせに! いつも邪魔ばっかりしてきたくせに!?」
混乱している彼女を宥めながら、その隙に手を握った。何も反応がない。どうやら彼女のキャパシティを超えてしまったらしいが、首筋や頰が赤くなっているのは暗闇の中でも確認できた。
あとで一つ一つ話すしかないな──と微笑み、「ほら、花火見てくださいよ」と彼女を促した。
-fin.

