それは線香花火のような



 海開きとあってか、浜辺は多くの人で混んでいた。もともと人口が多い県であるにもかかわらず、県内で海に面しているのはここ辺りだけであるため、毎年賑わいを見せている。

「西村くんたち、今日は泳がないの」

「僕は泳ぎますよ」

 僕は小学〜中学の間だけ元水泳部であり、夏の間も海やプールに来る機会があれば泳ぐことが多い。清水さんは学生時代は運動部であり、泳ぐことも難なくできるという。山下くんも泳げるほうだ。

 だが、牧さんは泳ぎは得意な方では無いらしく、ビーチバレーやかき氷、砂浜での遊びなどを海の遊びとしているらしく、一人で待たせるわけにもいかないので、二人ずつ組み合わせを変えながら遊ぶことにした。

「その水着、似合いますね」

 白いビキニから伸びる長い肢体に僕はちらりと目を走らせた後、明後日の方を見ながら一応褒めた。

「ちゃんと見てる?」

「いや勘弁してください。"ちゃんと"見たら文句言うでしょ貴女」

「そんなことない。ねえ、大丈夫かな、私。西村くん。ちゃんと私可愛い?」

 母を赤らめてもじもじと立ち、少し自信なさげに見上げてくる清水さんに、僕は到底視線を合わせることができなかった。

「そういう台詞は僕じゃなくて山下くんにお願いしてください」

「だって、山下くんが牧さんに取られてるから西村くんしかいないのよ」

 せっかく可愛いの着てきたのに、と頰を膨らませて拗ねる清水さんを見て、黒い気持ちが湧き上がった。一瞬可愛いと思ったのは気持ちの迷いだったらしい。口が裂けても可愛いなんて絶対に言ってやらないと思った。

 僕は彼女に向けて「ほら、入りますよ」と言い、準備運動もそこそこに海に入った。