清水さんはピキッと表情が石になったが、なんとか平静を保って「あー、いいんじゃないかな。まあでも牧さんに聞いてみないとわからないよね。予定もあるかもしれないよね」と答えた。頬の筋肉が痙攣しているのを見て僕はひっそりとクスクス笑った。

「もし行きたいって言ってくれたら、四人とも行ける日に日程調整したらいいですよ。みんなで行くほうが楽しいですし、清水さんも女の子一人いた方が変な噂立ちませんよ。──山下くんも牧さんが来る方が嬉しいだろ」

 にやりと笑ってわざとらしく山下くんを見ると、彼は嬉しそうな困惑したような表情をして「そ、そうですね」と頷いた。

(清水さんは人をついで扱いするからついで扱いされるんだよ)

 結局、牧さんは「皆さんにお誘いいただけるなんて嬉しいです」と眩しい笑顔で快諾してくれた。その後、清水さんは分かりやすいくらい落ち込んでいたが、僕はせいせいする気持ちでいっぱいだった。

 その週末、ドライブ好きの山下くんの車に全員迎えにきてもらって乗せてもらうことになった。山下くんを除いた三人で集合場所に待っていると、黒の軽自動車が目の前に止まった。山下くんの車だ。

 乗せてもらう前、清水さんが助手席をチラチラみているのが分かった。

「清水さん、助手席に乗りたいんですか?」

 これ見よがしにからかうようにくすくす笑うと、清水さんは顔を赤くしながら慌てて僕に噛み付いてきた。

「そ、そんなわけ......! 仲のいい西村くんが乗ればいいでしょ!」

「あ、違うんですね。すみません。ふふ、なんでです、僕はいいですよ。山下くんも助手席に男乗せても楽しくないだろうし。──折角だから牧さん乗りなよ」

 牧さんを助手席に乗るように促すと、素直な牧さんは微笑んでお礼を言って乗り込んだ。山下くんは嬉しそうだ。それを見た清水さんはちょっと泣きそうな顔をして、僕は清水さんを見て満足して唇の端を上げた。

 素直じゃない清水さんは、かなり可愛かった。