橘先生が出て行くとボスはまた怖い顔に戻っていた。

「お前、ふざけるなよ」

うわー。
過去最高レベルに怒ってます。

「辛いなら辛いと何で言わない」
「仕事が残っていて、それを片付けたくて・・・」
「それで、悪化させて橘を呼んだのか?」
「まあ」

ボスに言ったら怒ると思って、言えなかった。

「熱は?」
黙って首を振った。

1歩、2歩、近づいたボスの手が額に触れる。
避けようかとも思ったけれど、左手で肩をつかまれ逃げられなかった。

はあぁー。
盛大な溜息。

「いつから?」
「昨日の夜」
「何で言わないんだよッ」
強い口調で言われ、ウルッとした。

「何度も何度も、大丈夫かって聞いたはずだろう。なぜ言わない。そんなに俺が信じられないのかッ」
もう、怒鳴り声に近い。

「・・・」
「何とか言えよ」

倦怠感と消えない頭痛。その上怒鳴られて、私も限界だった。

「言ったら怒るから」
熱のせいで心が弱くなっていた。

いつもならしまっておく言葉がつい口に出てしまった。

「じゃあ、怒られるようなことするなよ」
幾分トーンの下がったボス。

「そこまでしてしないといけない仕事だったのか?お前がしなくても誰かするだろう」

それを聞いて、一気に涙が流れ落ちた。