「そのことはいい。お前が大変なのも分っている」
「じゃあ何だ」
「俺が言いたいのは並木くんのことだ」
ああ、そっちかぁ。

「なぜ彼女も連れて行った。彼女はまだ新人で、ただでさえ年上の秘書達から標的にされがちなんだ。昨日みたいなことをすれば必ずイジメられるぞ」
説教じみた口調にカチンときた。

「お前が止めろ。それが上司の仕事だろう」

大体、武広が黙っているから並木がイジメられるんだ。
この間のミーティングの件だって、俺はまだ納得していない。

「もちろん、彼女に非がなければいくらでも叱ってやるよ。でも、勝手に休んだのは彼女だ。それもボスと一緒に」
「ボス?」
「彼女がお前のことをそう呼んでる」

へえ。
俺の知らないところで、何を言ってるんだ。

「今回のこと、俺は何も言わないからな。自分で始末しろ」
普段は冷静な武広が、珍しくキレた。