「人に言う前に、自分を反省しろ」
武弘の強い言葉。

確かに、言い返せない。

「でも、それだけじゃないと思うぞ。お前とのことだけなら、マンションを出ればいいだだろう」
「まあな」

ップププ。
つながらない電話。
「ダメか」
「ああ、出ない。武広、お前がかけたら」
「出ないよ」
わかったことだろうと、笑われてしまった。

そうだな、今は誰が連絡しても同じかもしれない。

「まずはメールを送ってみるか。『退職の書類があるので提出をお願いします。送り先を教えてもらえば、郵送します』これで何か言ってくるだろう」
仕方ないなあと、メールを打つ武広。

本当に、どんなことにも動じない優秀な男だ。
それに引き替え、俺は・・・

「しっかりしろ。この先どうなるかはお前次第だぞ」
あ、ああ。分ってる。

今更だが、俺が気づいてしまったんだ。
どんなことがあっても、あいつはあきらめない。