秘書室のデスクの中は奇麗に片づけられていて、ロッカーも空っぽだった。
武弘の元に辞表が置いてあった。
そして、俺のデスクには『お世話になりました。ありがとうございました』の一文。

馬鹿野郎。
こんな一言で片づけられるものか。

「どうやら、本気で逃げ出したみたいだな」
淡々と口にする武弘に腹が立つ。

「武弘。お前、何も知らないのか?昨日までは普通だったんだ。ミーティングでいじめられたんじゃないのか」
他には心当たりがない。

「いじめられてはいない。ただ、」
「ただ、なんだよ」
「少し、説教した」
はあ?

「お前、一体何を言ったんだよ」
思わず、襟首をつかんでしまった。

「落ち着け、話すから。手を放せ」
しっかりしろと睨まれて、やっと正気に戻った。