ドキドキと心臓が大きな音を立てる中、必死の思いで彼のシャツを掴んだまま電車に揺られる私。


「……先輩、大丈夫ですか?」
「な、なんとか…大丈夫です」

大丈夫、大丈夫だと何度も自分の中で言い聞かせた。



だって御坂くんは優しい。
それは今日の放課後だけで十分に伝わった。

ただ“男の人”というだけで恐れてしまう私がいる。


けれど違うんだ、御坂くんは。
私が怖がっている“男の人”とはまったく違う。

意地悪なんてしないし、むしろ気を遣わせてばかりいるというのに。


「ふっ、無理は禁物ですよ」
「気をつけます…」

「突然気絶されたら困りますから」
「……っ、ごめんなさい」


思わず謝ると、御坂くんにクスクス笑われて。

それが恥ずかしくなって顔が熱くなる中、もう指先の震えがおさまっていることに私は気がついた。