「咲!待ちなさい!」

「何、お父さん。
御坂くんはそんな軽い人じゃないもん」


御坂くんを見たことがないくせに悪く言うお父さんに対して、無意識に腹を立てていたらしい私はつい強く当たってしまう。


「ほら、お父さんが言いすぎるから咲が怒ったじゃない」

「なっ…」

「お父さん。御坂くんは本当に真面目で優しくて、お母さんの言う通り素敵な人なの。

だから悪く言わない、で…」


ついお父さんに対して、御坂くんのことを語っていた私は我に返った途端に恥ずかしくなる。


「……っ、い、行ってきます…!」

ふたりの反応を見ずに、私は靴を履くなり急いで外に出てドアを閉めた。



「男を怖がってた咲があんなこと言うだなんて…本当にいい相手を見つけたんだな…」

「だから言ったじゃない。もう否定的な態度はやめて、認めたらどう?」

「認めたから落ち込んでるんだ、咲がついに男のものに…」



そのため私はドアを閉めた後の玄関でふたりがどのような会話をしていたのかは知らない。