御坂くん、溺愛しないで。




それから少しの間、口を閉じて黙ったまま電車に揺られていると、だんだんと人が増えてきた。


昨日や一昨日同様、私はドア付近の壁に背をつけて立っているため、男の人と触れ合うことはないけれど。

右手に持っていた紙袋がグシャッと音を立てたため、ハッとする私。


人の流れに沿って、紙袋が持っていかれそうになったのだ。

慌てて中を確認すると、グシャッとなったのは紙袋だけで中身は無事のため安心する。


良かった。

これでパウンドケーキの形が崩れてしまえば、元も子もない。



「それ、先輩の手作りですか?」
「そうなの。御坂くんにあげようと思って…」

「えっ、俺にですか?」
「そうだよ、御坂くん…に……」


そこまで言いかけて、ようやく自分が何を言ってしまったのかを気づいた私。

思わず固まってしまう。