「それでも、だな…お父さんは悲しいぞ。
咲に彼氏が……」
「彼氏じゃないよ、ふたりとも誤解してる!ただ琴葉の後輩で、助けられたからそのお礼で渡すだけなの!」
大きめの声を上げて誤解を解けば、お父さんは目を丸くした。
「そ、そうか……そうだよな、良かった良かった。
お父さんも誤解してすまない」
かと思えば嬉しそうに笑い、私に謝りながらラッピングされたパウンドケーキを渡してきた。
なんとかピンチを切り抜けることができたけれど。
「でもその琴葉ちゃんの後輩って男?」
「そ、そうだよ…」
「ふーん。
咲って男がすっごい苦手なのに、よく渡せるね」
ここに来て鋭いお母さんに指摘され、思わずギクリとしてしまう。



