理由がわかるはずもなくリビングにあるテーブルに行くと、スーツ姿のお父さんが黙々とトーストを食べていた。
お母さんと違って何やら不機嫌そうである。
「お父さん、おはよう…」
「咲」
「は、はい!」
やっぱり気のせいではないらしく、いつにも増して低い声で話すお父さん。
私は慌ててテーブルを挟み、お父さんと向かい合って座った。
「昨日リビングに何か忘れ物しなかったか?」
「忘れ物…?」
「これだ」
そう言ってお父さんがテーブルの上に何かを置いた。
「……っ」
それを見て言葉を失う私。
お父さんがテーブルの上に置いたものは、昨日ラッピングしたパウンドケーキだった。
サーっと顔から血の気が引く中、お父さんに鋭く睨みつけられる。
最悪だ。
昨日、いつもより両親が帰ってくるのが遅かったため、先にご飯やお風呂を済ませて寝る準備に入っていた私。
そんな中すっかりとラッピングしたパウンドケーキの存在を忘れ、リビングに置きっ放しだったのだ。



