「あ、よかった。居たんだね。」

扉を開けると、そこに居たのは天音だった。

「あれ、あんた…。」

以前、天音と月斗が小屋の前で話していたのを見た男も、天音の事を覚えていた。
なぜなら、月斗が自分達以外の、しかも女と話している所なんて、今までほとんど見た事がないからだ。

「すごくない?私ちゃんとここまでの道、覚えてたみたい。」

天音が月斗に向かって、満面の笑みでそう伝えた。
しかし、月斗は天音のその言葉に、眉のシワをより一層増やしていった。
天音がこの道を覚えたという事は、月斗にとっては不都合な事なのだ。

「お前…。ちょっと来い。」

そう言って月斗は、天音の手を引っ張り、無理やり外へと連れ出した。

「お前…。やっぱり城の回しもんか?何しに来た!」

月斗は、やはり機嫌の悪そうな声で突然叫んだ。

「ち、違うよ。こないだは、ありがとう。それから、なんか私のせいであんな事になって…。謝りたくて…。」

天音はやはり、自分のせいで月斗が捕まってしまった事を気にしていた。

「…お前のせい?」

しかしその言葉を聞いて、月斗はまた顔を大きく歪めた。

「でも、あなたは反乱者なんかじゃないよね?」

天音は疑いのない真っすぐな瞳で、月斗の鋭い瞳を、何の躊躇もなく見つめた。

「は?お前が何知ってんだよ。見ただろう、町の奴らが俺を見る目。」
「…。」

『窃盗や、国の公共物破壊などは数えきれないほど。その時人をケガさせた事だって、何度もあるわ。』

確かに彼女もそう言っていたが、天音はそんな事信じたくなかった。
それは彼の寂しげな瞳が、そうさせているのだろうか。