「お前はなぜ、国に反発する?」
「は?」

しかし、京司はもう一度顔を上げ、そう月斗に問う。それを話すために、今日ここまで来たのだ。
しかし、突然の京司のその問いに、月斗の表情がまた一変した。

「なぜだ…。」
「…お前にはわかんねーよ!」

その瞬間、月斗は鉄格子に顔をくっつけ、京司を鋭く睨みつけた。
そして確信した。
やはり、この世間知らずなお坊ちゃんが、天使教に違いないと…。

だから、この国はこんなになってしまったんだ……。

「あんたには、一生わかんねーよ!天師教さんよ!」

ボン!!
その瞬間、小さな爆発音が鳴り響き、辺りには煙が立ち込めて、周りが一切見えなくなった。

「ゴホゴホ。」

京司も、辺り立ち込める煙を吸い込み、大きくせき込んだ。
そして、目を開けることもままならなくなり、その場にしゃがみこむ。

「天師教様!大丈夫ですか!」
「いいから、あいつを探せ!!」

兵士が、先程の爆発音を聞きつけ、京司の元へ駆け寄って来たが、時はすでに遅し。
牢屋の鉄格子はなぜか大きくひん曲がっていて、そこに月斗の姿はなかった。

「脱走者だ!早く探せ!」

兵士達は慌ただしく走り出した。

「くそ!!」

そして、京司の叫びが、冷たい地下の牢屋にこだました。