カツカツカツ

城の地下にある暗い通路には、京司と数人の兵士達の足音が響き渡った。

ギー
重く厳重な鉄の扉に兵士が鍵を差し込み、手をかけると、その扉は不気味な音を立てて開いた。
その扉の中には、いくつかの牢屋がずらりと並んでおり、その中の牢屋には、反乱者と呼ばれる者が何人か捕えられている。
そして、その中の一つの牢屋の前で兵士が足を止めた。

「おい!ツキト。」

兵士が鉄格子の向こう側で、冷たい床に寝転んでいた月斗へと呼びかけた。

「あ?」

しかし、月斗は不機嫌な声を出すだけで、起き上がろうとはしない。

「起きろ!」
「は?」

月斗はその言葉に顔を歪め、兵士の方へ寝ころんだまま、視線だけをそちらに向けた。
すると、兵士の横には、見慣れない格好をした男が立っている事にすぐに気が付いた。
その男は、明らかに兵士とは違う、身分の高い者が着る衣服を身に着け、帽子から垂れる薄い布がその顔を覆っていて、月斗にはその顔を判別する事ができなくなっている。

「お前達は席を外せ。」
「!?何を…。」

すると唐突に、京司はありえない命令を口にした。
ここへ連れてくる事でさえ、宰相にしられたらクビが飛びそうな事なのに、反乱者と二人きりにするなんて、そんな危険を伴う事をさせるわけにはいかなかった。それが兵士の役目。

「いいから!これは命令だ!」
「…ハッ。」

しかし、しっかりと教育をされているこの国の兵士達は、天使教の命令に逆らう事などできるわけがない。
兵士達は仕方なく、京司の様子をちらちら横目で伺いながら、鉄格子の扉の外へと歩いて行った。

「お前が月斗…。」

京司がその薄い布越しに、じっと月斗を見つめる。
その目つきの悪い人相は、札付きの悪だと一目瞭然だ。

「は?お前誰?何しに来たわけ?」

急に起き上がって鉄格子の前に立った月斗は、いつもと何ら変わらない、無礼な口調で京司に話しかけていく。